1. 先月納めた1件で、いくら残ったか分かりますか
受託加工の会社では、会社全体の利益なら試算表で分かります。ところが、先月納めた1件でいくら残ったかは、試算表からは読み取れません。
案件ごとの粗利が分からないと、見積の値段は似た仕事の記憶を頼りに決めることになります。赤字だったと分かるのは、決算が出たあとです。こうした状況に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、金属を仕入れて加工し販売するお客さまの業務をもとに、案件ごとの粗利が見えにくい理由と、お客さまが求めた形を解説します。社名は伏せ、画面の会社名と金額は置き換えています。
2. 1件ごとの粗利が見えない理由
2.1 仕入れと加工と売上は、別々の日に金額が決まる
受託加工の仕事は、注文ごとに材料・加工の中身・外注の有無が変わります。1件の仕事の中で金額が決まる日は、次のようにばらばらです。
金額 | 決まる日 |
|---|---|
材料の金額 | 仕入れた日 |
加工費 | 加工を終えた日 |
外注費 | 外注先から請求が届いた日 |
売上 | 品物を納めたあと |
材料は、いくつかの案件の分をまとめて仕入れることが多くあります。外注の請求も月末にまとめて届くため、1枚の伝票の金額を案件ごとに振り分ける作業が担当者に残ります。
会計は月ごとに会社全体で締める作りで、案件ごとに原価を積む前提になっていません。案件ごとに金額を集める人がいなければ、粗利は1件ずつには出てこないのです。
振り分けを後回しにした月は、案件ごとの原価が空いたまま次の月が始まります。決算が出るのは数か月後なので、1件ごとの粗利を確かめられるのも同じ数か月後です。
2.2 案件ごとの原価がないと、値上げの根拠を示せない
材料の値上がりが続くなかで、案件ごとの原価は値上げの交渉に使う数字にもなります。中小企業庁の2026年3月の調査によると、コストが上がった分のうち値段に乗せられた割合は全体で54.2%でした。
項目 | 値段に乗せられた割合 |
|---|---|
全体 | 54.2% |
材料費 | 55.7% |
労務費 | 50.0% |
材料の値上がりは、仕入れの伝票を見せれば説明できます。一方、社内で加工にかかった時間は、案件ごとに金額にしていなければ見せる数字がありません。
原価と今の値段の差を数字で示せる会社と、「厳しいので上げてほしい」としか言えない会社では、交渉の進み方が変わります。
出典:中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果」(2026年6月26日公表)
3. 見積を受注のあとに転記する管理は、続かない
案件ごとの原価を出すために、多くの会社がまず使うのは表計算です。見積を表計算で作り、受注したら顧客名や明細を案件管理の表へ転記します。仕入れや加工費が決まるたびに、同じ表へ金額を書き足していく形です。
同じ数字を2回入れる負担
同じ数字を2回入れる作業は、注文が重なる忙しい月ほど後回しにされがちです。転記していない案件が1件あるだけで、表の合計が合っているかを誰も言えなくなり、会議で表を開く人が減っていきます。
MONOistの記事「原価の見える化はなぜ半年で形骸化するのか」も、同じ理由を挙げています。現場が同じ数字の二度打ちを続ける限り、案件ごとの原価は見えないという内容です。
表を細かくしても続かない
表の作りを細かくすると、入れる欄が増えて転記の量も増えます。見積と案件が別々の場所にあり、間を人の手で埋める作りのままでは、表を直しても管理は続きません。
4. お客さまの業務と、求めた形
4.1 業務は、仕入れ・加工待ち・売上の順番
お客さまは、金属を仕入れて加工し、販売する製造業の会社です。営業が商談を取ってくると、材料を仕入れて加工の順番を待ち、加工して納めた時点で売上が立ちます。
加工の順番を待っているあいだも、仕入れの金額はすでに決まっています。1件の案件の中でも、加工を待つ時期、加工の途中の時期、納めたあとの時期では、決まっている金額が違います。
粗利を1件ずつ見るには、時期ごとに増える金額を、同じ案件の記録に足していく必要がありました。
4.2 求めたのは、商談ごとに粗利まで見る形
お客さまが求めたのは、営業が取ってきた商談ごとに加工案件を作る形です。1件の加工案件で、顧客・商談・見積・仕入れ・加工費・原価・粗利までを見られるようにしたいという希望でした。
HeyKnotは、お客さまに仕入れから売上までの流れを聞き取り、Zoho CRMに加工案件の画面を作りました。
- 加工案件は見積から作るので、顧客や明細を転記する必要はありません
- 仕入れと加工費を案件に記録すれば、原価と粗利は記録した金額から計算され、手で入れる必要はありません

💡お客さまの課題と、HeyKnotが組んだ形
課題 | HeyKnotが組んだ形 |
|---|---|
案件ごとの粗利は、仕入れと加工費を後から集めないと分からない | 商談ごとに加工案件を作り、仕入れと加工費を案件に記録する |
見積の内容を、受注のあとに別の表へ転記する | 見積から加工案件を作り、顧客・商談・明細を引き継ぐ |
まとめ
今回は、受託加工の会社で案件ごとの粗利が見えにくい理由と、金属加工のお客さまが求めた形を紹介しました。
仕入れ・加工・売上の金額は別々の日に決まり、会計は会社全体で月ごとに締めます。案件ごとに金額を集める仕組みがなければ、1件ごとの粗利は出てきません。見積を受注のあとに転記する管理も、同じ数字の二度打ちが続かない原因になります。
次の記事では、見積から粗利までを1つの加工案件にまとめるために決めた方針を紹介します。見積と加工案件のつなぎ方、仕入れの割り当て方、原価と粗利の計算、加工の進み具合の見せ方の4つです。ぜひあわせてご覧ください。