Zoho CRMを使い始めたものの、「どのタブに何を登録すればいいのか分からない」「見込み客と取引先の違いが曖昧」「タブ同士がどうつながっているのかイメージできない」と感じたことはないでしょうか。
Zoho CRMにはさまざまなタブがありますが、まず理解すべきなのは「見込み客」「取引先」「連絡先」「商談」の4つです。この4つの役割と関連性を理解することで、CRM全体のデータ構造や営業活動の流れがぐっと分かりやすくなります。
本記事では、それぞれのタブの役割から、CRM特有の「ステップアップ」という考え方、そして各タブがどのように連携して営業活動を支えているのかまで、初めてZoho CRMを使う方向けに分かりやすく解説します。
1:見込み客からステップアップするという概念
▼①「見込み/取引先/連絡先/商談」のタブの役割

CRMを初めて使うと、「どの情報をどのタブに登録すればいいの?」と迷うことが少なくありません。
その疑問を解消するために、まず理解しておきたいのが「見込み客」「取引先」「連絡先」「商談」の4つのタブです。
見込み客(Leads)
見込み客は、まだ自社との取引が始まっていない相手を管理するタブです。お問い合わせや資料請求、展示会、Webフォームなどから獲得した情報を登録し、「これから営業活動を始める相手」を管理します。まだ取引先や担当者として確定していないため、この段階では営業活動を進めながら情報を充実させ、商談化できるかどうかを見極めていきます。
取引先(Accounts)
取引先は、会社や団体など「組織」を管理するタブです。会社名や所在地、業種など、その企業自体の情報を管理します。1つの会社には複数の担当者や複数の商談が紐づくため、企業単位で情報を集約する役割をっています。営業活動の履歴を会社単位で把握したい場合の中心となるタブです。
連絡先(Contacts)
連絡先は、取引先に所属する担当者を管理するタブです。氏名やメールアドレス、役職、電話番号など、人に関する情報を登録します。通常は取引先と関連付けて管理されるため、「どの会社の誰なのか」が明確になります。メール配信や商談、サポート対応など、多くの業務で中心となる情報です。
商談(Deals)
商談は、営業案件を管理するタブです。「誰に」「何を」「いくらで」「いつまでに受注を目指すか」といった営業活動の進捗を管理します。商談は取引先や連絡先と関連付けられるため、「どの会社のどの担当者との案件なのか」がひと目で分かります。売上予測や営業進捗の可視化において最も重要なタブの一つです。
▼②ステップアップとは
4つのタブの役割を理解すると、次に「なぜ最初から取引先として登録しないのだろう?」「なぜわざわざ見込み客というタブがあるのだろう?」という疑問が出てくるかもしれません。その答えとなるのが、CRM特有の「ステップアップ」という考え方です。
前提として、まだ取引につながるか分からない相手は、「見込み客」として管理します。
そして、ヒアリングや営業活動を通じて「商談を進める価値がある」と判断したタイミングで、「取引先」「連絡先」「商談」へ変換し、本格的な営業活動へ移行します。
この変換のことを、Zoho CRMではステップアップと呼びます。
また、CRM製品や営業の世界ではコンバージョン(Conversion)と呼ばれることもあります。

Excelなどで顧客管理をしている場合は、1つの表に情報を追加していくことが一般的なため、この考え方に馴染みがない方も少なくありません。しかしCRMでは、すべての顧客を最初から細かく管理するのではなく、営業活動の進捗に合わせて管理方法を変えていくという考え方を採用しています。
ステップアップとは、言い換えれば「この会社・担当者に営業投資する価値がある」と判断し、管理のレベルを一段引き上げることです。
その結果、見込み客では企業名や担当者名、連絡先など最低限の情報を管理していた状態から、「取引先(会社)」「連絡先(担当者)」「商談(営業案件)」へ情報を整理し、継続的な取引を前提とした管理へ移行します。
これにより、担当者の異動や複数案件への対応、過去の取引履歴の蓄積など、長期的な顧客管理がしやすくなります。


2:ステップアップ後のタブ同士の関係性
①取引先/連絡先/商談の関係性
見込み客をステップアップすると、それまで1つのレコードとして管理していた情報が、Zoho CRMの各タブへ役割ごとに分かれて登録されます。
例えば1社に複数の担当者がいる場合、1つの取引先に対して複数の連絡先を紐付けることができます。さらに、それぞれの担当者ごとに商談を管理することも可能です。
そのため、「どの会社の、誰と、どんな商談を進めているのか」という関係性を自然に管理できるようになります。
ステップアップでバラバラに分解された3つのタブは、それぞれ独立しているわけではなく、下図のように関連付けられながら1つの顧客情報を構成しています。

ステップアップによってデータはそれぞれのタブへ分かれますが、日々の運用では「別々の場所を行ったり来たりしなければならない」という心配はございません。
実際には、取引先の詳細画面を開くと、その会社に紐づく連絡先や商談が関連リストとして一覧表示されます。そのため、会社を起点として顧客情報をまとめて確認・管理できるようになっています。
「データは役割ごとに整理する」「必要なときは1つの画面でまとめて確認する」。
この2つを両立しているのが、Zoho CRMの関連付けの仕組みであり、Zoho CRMの考え方です。

②取引先の親子関係
CRMでは、企業やデータ同士の親子関係を管理したい場面がよくあります。
例えば、
・親会社と子会社
・本店と支店
・本部と各営業所
・フランチャイズ本部と加盟店
など、1つの組織が階層構造になっているケースです。
このような関係性をCRM上で管理しておくことで、「この支店はどの本店に属しているのか」「この子会社はどのグループ企業なのか」といった情報をひと目で把握できるようになります。

Zoho CRMでは、このような親子関係を「ルックアップ項目」を利用することで表現できます。
Zoho CRMでタブ同士の関係性を作る際に使われるのが、ルックアップ項目です。
ルックアップ項目とは、別のタブに登録されているレコードを検索し、現在のレコードと関連付けるための項目です。
例えば、取引先タブに「株式会社A_本店」という親会社のレコードと、「株式会社A 東京支店」という支店のレコードが登録されているとします。
この場合、下記手順にて、次のような関係性をCRM上で表現することが可能になります。
①取引先タブに「親取引先」というルックアップ項目を用意(デフォルトで用意されています)
②子側である東京支店のレコードから「親取引先項目」にて「株式会社A_本店」を選択する
③子側からは「親取引先」がわかり、親側からは「子取引先一覧」が見れるようになる



このとき、ルックアップ項目に入力されるのは、単なる会社名の文字列ではありません。
実際には、CRM内に存在する「株式会社A」という取引先レコードそのものと関連付けられています。
そのため、親会社の名称が変更された場合でも、子会社や支店のレコードに入力された文字を一件ずつ修正する必要はありません。
関連付けられている親会社のレコードを更新することで、CRM内でも同じ企業として管理し続けることができます。
つまり、ルックアップ項目は、別々に登録されているレコードをつなぎ、「このデータは、どのデータに属しているのか」を表現するための仕組みです。
親会社と子会社、本店と支店だけでなく、次のような関係性にも利用できます。
・商談と契約
・商品と保守契約
・物件と入居者
・プロジェクトとタスク
ルックアップ項目を利用することで、それぞれの情報を1つのレコードに詰め込むのではなく、役割ごとに別のタブで管理しながら、必要な関係性を保つことができます。
仮に本店側に「支店」という通常のルックアップ項目を作成すると、1つの項目では基本的に1つの支店しか選択できません。支店が増えるたびに項目を追加するような設計では、管理が複雑になってしまいます。
そのため、1対多の関係を作る場合は、複数存在する側から、1つの親を参照する設計が基本です。
「親側に子を登録する」のではなく、「子側で自分の親を指定する」と考えると、ルックアップ項目をどちらに作るべきか判断しやすくなります。
補足
①ステップアップのタイミングに正解はない
「ステップアップをいつするか」に絶対的な正解はありません。
重要なのは、自社の営業フローに合わせて「見込み客とはどのような状態か」「商談とはどのような状態か」という定義を決め、その定義に沿ってステップアップを行うことです。
よくあるパターンとしては、
・お客様側からお問い合わせが入ったらステップアップする
・初回商談(アポイント)のタイミングでステップアップする
・担当営業を割り当てた時点でステップアップする
などがありますので、参考にしていただけますと幸いです。
②「見込み客タブ」が不要なケースもある
Zoho CRMには見込み客タブがありますが、すべての企業で必ず使うわけではありません。
例えば、問い合わせ件数が少なく、営業担当者がすべての問い合わせに対応できる場合や、高額商材で一件一件を丁寧に営業するようなケースです。
このようなケースでは、「ステップアップ」という工程を挟まずに、最初から「連絡先」や「商談」を作成して管理する運用の方がシンプルなこともあります。
一方、Web広告や展示会などから毎月数百件のリードが流入するような企業では、まず見込み客タブで情報を蓄積・選別し、商談化できるものだけをステップアップする運用が効果的です。
つまり、見込み客タブが必要かどうかは、「営業活動の入口で見極める対象数が多いかどうか」が一つの判断基準になります。
③ToCビジネスでは取引先を使わないケースもある
今回紹介した構成は、主に企業を相手に営業活動を行うBtoBを想定しています。
一方で、個人のお客様を管理するBtoCでは、会社という概念が存在しないため、必ずしも「取引先」タブを利用する必要はありません。
その場合は、「連絡先」を顧客マスターとして利用し、必要に応じて商談と関連付ける運用が一般的です。
CRM製品側の標準的な考え方こそあれど、最終的には自社の業務に合わせて運用を設計することが重要です。
おわりに
Zoho CRMにはさまざまな機能がありますが、その土台となるのが「タブ同士の関係性」です。
この考え方を理解しておくと、項目設計や自動化、レポート作成など、今後CRMを活用していく上での理解もしやすくなります。
ぜひ、自社の業務フローと照らし合わせながら、最適な運用を検討してみてください。