CRMが定着しないのはなぜか?入力より先に直す業務の流れ
営業担当者がCRMに入力してくれない、結局マネージャーが一人ずつ聞いて回っている、という声はCRMを入れた会社でよく聞きます。Excelとの「二重更新」が続いている会社も珍しくありません。入力してくださいと頼む回数を増やし、研修をもう一度開いても、入力が続くのは数週間で、気づけば会議の資料はまたExcelに戻っています。
CRMが定着しないのは、各段階で誰が何を入力し、入力した情報を誰が何に使うかという業務の流れを決めないまま、入力だけを頼んでいるからです。担当者の意欲やITへの慣れを原因にすると、対策は入力の依頼と研修の回数を増やす方向に偏ります。日々の業務と設定が合っていなければ、呼びかけだけで入力は続きません。
この記事でわかること
- CRMが定着しない原因の見つけ方
- 入力を頼むほど使われなくなる理由
- 入力より先に決める業務の流れ
- 項目を必須と自動に分ける考え方
入力を頼むほど「報告のための道具」になる
入力した情報がマネージャー向けの集計にしか使われていない会社では、営業担当者にとってCRMは「報告のための道具」にすぎません。入力したあとに自分の案件の状況や次回の行動を画面で確かめられなければ、担当者が日常の業務で画面を開く理由がなくなります。入力は、会議の前日にまとめて済ませる作業になっていくでしょう。
マネージャーが空欄を見つけて催促し、担当者が形だけ埋めて会議に間に合わせる、という往復が続きます。催促で埋まった項目は次の商談の判断に使われず、使われない項目を埋めるためにまた催促が続きます。頼む回数を増やすほど、現場は報告のためだけに画面を開くようになるのです。

項目が多いと担当者が毎回判断を抱える
導入のときは、将来の分析に使うかもしれない情報まで集めたくなり、項目が増えやすくなります。項目が多いほど担当者は、書く範囲と選択肢の選び方を毎回判断しなければなりません。ほとんど使われない項目が画面に並ぶと、商談の判断に要る項目まで見つけにくくなるでしょう。
標準のステージを変えずに使い、実際の営業の進み方と合っていない場合も入力は止まります。担当者が今の商談に当てはまるステージを選べなければ、更新を後回しにするか、人によって違うステージを選びます。同じステージに並ぶ案件の見込みがそろわないのは、ステージの定義が営業の進み方と合っていないからです。会議用のExcelが残っている会社では、CRMとExcelで最新の情報が食い違い、会議の前に見比べる作業まで増えてしまいます。
直す順番は項目より先に業務の流れ
HeyKnotが項目やステージを決めるのを支援の後半に置いているのは、項目が業務の流れから決まるものだからです。見込み客とは誰のことか、商談になる条件は何か、受注までに何段階あるかが決まれば、ステージは段階の数だけ作れば足ります。段階ごとに誰が何を確かめるかまで決まっていれば、入力する項目も自然に絞られていきます。
載せ替えで相談を受けた案件でさえ、ルールの半分以上を0から決め直し、業務の流れの8割を変えることが珍しくありません。入力項目の棚卸しより先に、営業会議で見ている情報と決めていることを書き出します。残す項目と外す項目を、現場のメンバーが自分たちで判断しやすくなるからです。HeyKnotの進め方は「業務の再設計」のコラムに書きました。
項目は段階ごとに「必須」と「自動」に分ける
業務の流れが決まったら、情報が必要になるステージでだけ項目を必須にします。商談の初期に受注の理由を求めても担当者は書けませんが、受注が決まった時点では判断の材料がそろっています。必須にする時点を合わせれば、ステージを進める操作と記録が一つの操作になります。入力できない情報まで必須にすると「仮の値」が登録されてしまうので、必須にするのは担当者が顧客に聞ける時点の情報だけです。

担当者が判断しなくても取得できる情報は、手入力から外します。メールのやり取りはメール連携で残し、打ち合わせの記録はカレンダー連携で残し、集計や分類は計算で出す項目にします。手で入力するのは、商談で聞いた内容と次回の行動に絞られるでしょう。営業会議は一覧とダッシュボードを見て進め、会議に要る情報がそろった項目から順にExcel側の更新を止めていくのが順番です。
先行運用で入力に迷う場所を見つける
最初から全社に広げると、入力の決まりのあいまいさや不要な項目が多くの利用者に影響します。まずチームリーダーと実務担当者が実際の案件で、取引の作成から受注までを通して操作します。先行運用で見つけるのは、業務の流れと設定のずれです。担当者が説明なしで選べない項目は名称や選択肢を直し、取得できない必須項目は必須にするステージを後ろへ移します。
実際の案件が一連のステージを進み、会議に要る情報を画面から把握できるようになってから、一つの営業チームで運用の決まりを固めます。他のチームへ広げるのは、決まりが固まったあとです。入力率の数字だけを目標にすると「形だけの入力」が増えるため、記録した内容が次の行動と引き継ぎに使われているかを合わせて見ます。
CRMが定着しない会社に共通しているのは、入力した情報を使う場面が決まっていないことです。各段階で誰が何を入力し、誰が会議や引き継ぎで何に使うかを先に決めてしまえば、項目は業務の流れから自然に絞られます。入力を頼む回数を増やさなくても、必要な情報が残るようになります。