AIに「自社だけの答え」を出させるにはデータが不可欠という話

営業責任者がAIに「最近、失注が続いているのはなぜか」と聞いたとします。返ってくるのは、価格で負けている、決裁者に会えていない、提案のタイミングが合っていない、といった理由でしょう。どれも間違いではありません。けれども、どの会社の営業責任者が同じ質問をしても、ほぼ同じ答えが返ってきます。

その答えで、来月の打ち手を決められるでしょうか。

決められない理由ははっきりしています。AIの性能が低いからではありません。AIは、その会社の失注案件を1件も知らないのです。ChatGPTでもClaudeでもGeminiでも、自分用にカスタマイズしたり、スキルやプラグインを足したりはできますが、生成AIは世の中のデータをもとに、多くの人に当てはまる答えを返すように調整されています。渡される情報が少ないほど、答えはどの会社にも当てはまる平均的なものになります。

この記事でわかること

  • AIの答えはなぜ平均に寄るのか
  • データがないAIは何を返すのか
  • AIの要約がCRMをどう変えるのか
  • CRMに最初に何を残すのか

著者情報

永山 正和

永山 正和

CRM/顧客管理に携わって10年以上。セールスとしてラクス、Agoda、Salesforce、HubSpotにてCRM提案営業に従事。600社以上の提案/導入実績。HeyKnot株式会社を創業後、AI・マーケティング・営業・CS・オペレーションを一気通貫での仕組みづくりを強みとしてプロジェクトマネージャーへ。

失注の記録を渡せばAIは自社に合った打ち手を返す

たとえばCRMに、直近半年で失注した24件の記録が残っていて、そのうち15件で、比較検討の最後に「導入後の支援体制」が理由に挙がっていたとします。この記録を読んだAIなら、価格を見直すより先に、導入後の支援内容を提案の早い段階で示しましょう、と答えられます。最初の「価格で負けている」とは、打ち手がまったく違います。自社の記録から出てきた答えだからです。

「来月の受注見込みはどのくらいか」「次に連絡すべき顧客は誰か」といった質問も同じです。商談の履歴がなければ、AIは営業全般の傾向から推測して答えるしかありません。

AIの要約で顧客の本音が消えてしまう

最近は、商談の録音をAIが要約して、CRMに自動で登録してくれる仕組みも増えてきました。入力の手間が減るのは、現場にとって本当にありがたいことです。

ただ、要約の途中で、お客様が口にした懸念や本音が、ありきたりな表現に置きかえられてしまうことがあります。たとえば「前任者のときに一度失敗していて、今回は社内の目が厳しい」という発言は、要約されると「社内調整に時間を要する見込み」になります。事実としては間違っていません。でも、前任者の失敗も、社内の厳しい目も、この一文からは読み取れません。

こうした要約ばかりが積み重なると、AIが読むCRMの記録そのものが一般論に近づいていきます。入力の手間を減らすためにAIを使うほど、AIの答えは平均に寄っていくわけです。私たちがいちばん気にしているのは、この点です。

自動入力を使う場合でも、要約とは別に、お客様の発言をそのまま残す項目を設けてください。

最初に残すのは受注と失注の理由

すべての商談を細かく記録する必要はありません。入力項目を増やすと、現場は入力を後回しにするようになり、データの量も質も落ちていきます。

まず残してほしいのは、受注した理由と失注した理由の2つです。どちらも、選択肢とお客様の発言の両方で残します。選択肢は件数を集計するため、発言はAIがその会社ならではの事情を読み取るためです。

AIを選ぶ前に、そのAIに渡せる自社の記録がCRMに残っているかを確かめてください。AIの答えがどこまで自社に合うかは、CRMに何が残っているかで決まります。

著者情報

永山 正和

永山 正和

CRM/顧客管理に携わって10年以上。セールスとしてラクス、Agoda、Salesforce、HubSpotにてCRM提案営業に従事。600社以上の提案/導入実績。HeyKnot株式会社を創業後、AI・マーケティング・営業・CS・オペレーションを一気通貫での仕組みづくりを強みとしてプロジェクトマネージャーへ。

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