AIに「自社らしい答え」を出させるには、CRMのデータが要る
この記事の結論
生成AIは、渡された情報が少ないほど多くの企業に当てはまる平均的な答えを返します。CRMの商談記録を渡すことで、たとえば失注の理由も自社の数字にもとづいて示せるようになります。
自社のデータを渡さない限り、生成AIが返すのは「どの企業にも当てはまる答え」です。
たとえば営業責任者がAIに「最近、失注が続いている理由は何か」と尋ねたとします。返ってくるのは、価格競争や決裁者へのアプローチ不足、提案のタイミングといった理由です。どれも間違いではありません。しかし、どの企業の営業責任者が尋ねても、ほぼ同じ答えが返ってきます。
その答えをもとに、来月の打ち手を決められるでしょうか。
AIの回答が的外れなわけではありません。AIは、その企業の失注案件を1件も知らないのです。
この記事でわかること
- AIの答えはなぜ平均に寄るのか
- データがないAIは何を返すのか
- AIの要約がCRMをどう変えるのか
- CRMに最初に何を残すのか
AIが返すのは、「平均的な正解」である
生成AIは、学習した膨大な文章の中からもっとも確からしい答えを組み立てます。質問に関する情報が少なければ、多くの企業に当てはまる一般論で答えることになります。
これはAIの性能の問題ではなく、仕組みそのものです。
AIの答えの精度は、AIに渡した情報の量と質で決まります。
データがなければ、AIは一般論を返す
同じ質問でも、CRMに直近半年の失注記録が残っていれば答えは変わります。
たとえば失注24件のうち15件で、比較検討の最終段階に「導入後の支援体制」が理由として挙がっていたとします。AIはその傾向を読み取り、「価格の見直しよりも、導入後の支援内容を提案の初期段階で示すこと」を打ち手として返せます。
一般論は、どの企業にとっても正しい答えです。しかし自社の打ち手を決めるために必要なのは、自社の数字にもとづいた答えです。
「来月の受注見込みはどのくらいか」「次に連絡すべき顧客は誰か」といった質問も同じです。商談の履歴がなければ、AIは一般的な営業の傾向から推測して答えるしかありません。
AIの要約は、記録を平均的な表現に置きかえる
ここで見落とされがちなのが、CRMへの入力そのものをAIに任せた場合です。
商談の録音をAIが要約してCRMに自動で登録する仕組みは、急速に普及しています。入力の工数が削減されることは、現場にとって大きな前進です。しかし要約の過程で、顧客が口にした懸念や本音は抽象的な表現に置きかえられがちです。
たとえば「前任者のときに一度失敗していて、今回は社内の目が厳しい」という発言は、要約されると「社内調整に時間を要する見込み」になります。
事実は残っても、その企業固有の事情は読み取れなくなります。
「平均的な表現」に置きかえられた記録を蓄積し続ければ、AIが参照するデータそのものが一般論に近づいていきます。AIを使えば使うほど、AIの答えが平均に寄っていくわけです。
そのため自動入力を使う場合でも、顧客の発言を要約とは別に「発言のまま」残す項目を設けることをおすすめします。
最初に残すのは、受注と失注の理由
すべての商談を詳細に記録する必要はありません。入力項目を増やせば現場は入力を後回しにし、データの量も質も落ちていきます。
まず残したいのは、受注の理由と失注の理由の2つです。理由は「選択肢」と「顧客の発言」の両方で残します。選択肢は件数を集計するため、発言はAIが背景を読み取るためです。
AIを導入する前に確認すべきなのは、どのAIを使うかではなく、そのAIに渡せる自社のデータがCRMにあるかどうかです。AIの導入効果は、CRMに何が残っているかで決まると考えています。