CRMの入力率と売上はそこまで比例しない
CRMにほとんど入力していないにもかかわらず、売上を大きく伸ばしている企業があります。
その一方で、CRMを隅々まで使いこなし入力率もほぼ100%でありながら、売上が伸び悩んでいる企業もあります。
この差は、どこから生まれるのでしょうか。
CRMの導入や活用を支援する立場からあえてお伝えすると、CRMの入力率と売上の相関は、多くの方が考えているほど高くありません。
この記事でわかること
- CRMの入力率と売上がなぜ比例しないのか
- CRMはそもそもなんのためにあるのか
- どんな営業にCRMが必要なのか
- CRMを入れる前になにを考えるべきか
売上を決めているのは、市場と商材と営業力
売上を大きく左右するのは、市場の伸び、商材の強さ、単価、営業力、接触量、コンペでの勝率です。CRMの運用は、これらの要素に直接は含まれていません。
市場が伸びていて商材が強く、営業力も高ければ、CRMの運用が整っていなくても売上は伸びていきます。
そもそもCRMに入力したからといって、市場が大きくなるわけではありません。商材が強くなるわけでも、単価が上がるわけでもありません。コンペの勝率も同じです。
CRMに残るのは、あくまで「すでに起きたこと」の記録です。入力率が表しているのも「記録がどれだけ残っているか」であって、「どれだけ売れるか」ではありません。
しかし、CRMは長らく「入力率の高さ」で評価されてきました。
そのためCRMを入れると、つい「入力率を上げれば数字も上がるはず」と考えてしまいがちです。その結果、現場には入力の負担だけが増えていきます。そして「こんなに入力しているのに、なぜ数字が変わらないのか」という不満だけが溜まっていきます。
とくに入力率をKPIに置いてしまうと、**「入力のための入力」**が始まります。商談の中身より、項目を埋めることが目的になってしまうのです。週次ミーティングでダッシュボードを開いても、話題が「誰が入力していないか」だけで終わってしまうこともあります。
では、CRMは何のためにあるのか
私たちの答えは、売上を直接上げるためというより「成長を再現できる状態」をつくるためです。
売れている企業でも、「なぜ売れたのか」がトップセールスの頭のなかにしかないことはよくあります。
どのリードがどんな順番で誰と会い、なにが決め手になって受注に至ったのか。
この情報がCRMに残っていないと、トップセールスが抜けた瞬間に同じ売れ方ができなくなってしまいます。新しいメンバーを増やしても、結局はそれぞれがゼロから手探りで営業を始めることになります。
反対に、受注までのプロセスが記録として残っていれば、人が入れ替わっても組織が大きくなっても、同じ勝ち方を何度でも繰り返せます。
たとえば「展示会で名刺交換したリードは、2回目の打ち合わせに役員が同席すると受注しやすい」という傾向があったとします。この傾向が見えていれば、新しいメンバーも初日から同じ動き方ができます。トップセールスの感覚を、組織の「型」として引き継げるようになります。
CRMが大きな効果を発揮するのは、いまの成長を次のメンバーへ確実に引き継ぎたい場面です。
個人の頭のなかだけでは、いずれ限界が来る
とくにCRMが必要になるのは、エンタープライズセールスのように1社で何人もの相手と会い、長いリードタイムのなかで複数の部署から合意を取りつけていく営業です。
たとえば、ある大手企業への提案を想像してみてください。
現場の担当者は導入に前向きでも、情報システム部はセキュリティを気にしていて、経理は費用対効果の根拠を待っています。さらに決裁者である部長は、来期の予算しだいで判断を変えるかもしれません。キーマンが途中で入れ替わることもあるでしょう。
こうした一人ひとりの温度感や進み具合を、半年から1年にわたって個人の頭のなかだけで管理し続けることは現実的ではありません。担当者が異動や退職でいなくなれば、積み上げてきた関係も一緒に途切れてしまうでしょう。
反対に、1回の訪問で契約が決まるような営業であれば、CRMがなくても十分に対応できます。
CRMがどれだけ効くかは、ツールの使いこなしよりも営業のスタイルで決まるのです。
CRMが必要な営業で、適切に運用できている企業が伸びる
つまり、「CRMを適切に使えば売上が上がる」わけではありません。事業をスケールさせやすいのは、CRMが必要になる営業モデルで、適切に運用できている企業です。
だからこそCRMを入れる前に考えたいのは、入力率の目標ではありません。自社の営業が「複数人・長期間・複数部署」にまたがるスタイルかどうかです。
もしそうであれば、まずは「なぜ受注できたのか」を確実に残すところから始めることをおすすめします。入力項目を増やすのは、その情報が確実に残る状態をつくってからでも遅くありません。